2021年9月15日(水)、トピックセミナー(学校保健・公衆衛生教育)をオンラインで開催いたしました。
世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、学校保健・公衆衛生教育が改めて注目されています。学校保健・公衆衛生教育分野における最新の動向、活動事例を紹介し、本分野における「日本型教育の海外展開」の可能性を模索することを目的として、トピックセミナー(学校保健・公衆衛生教育)を開催いたしました。独立行政法人国際協力機構(JICA)、株式会社LIXIL、琉球大学大学院より講師をお迎えしてご講演いただきました。
本セミナーには、150名近くの方々にご参加いただきました。心より御礼申し上げます。
プログラム
時間 | 内容 | 講師(敬称略) |
---|---|---|
16:00~16:03 | 開会あいさつ/EDU-Portニッポン概要 | EDU-Portニッポン事務局 |
16:03~16:23 | 日本の学校保健の特徴と途上国への展開の可能性 -学校保健に関するJICA協力のこれまでとこれから- |
独立行政法人国際協力機構 人間開発部 国際協力専門員 野村 真利香 氏 |
16:23~16:43 | 日本企業の学校保健分野の海外展開事例 -衛生環境改善への取組みやコロナ禍における新たな取り組み- |
株式会社LIXIL SATO事業部 小林 裕生 氏 |
16:43~17:03 | ウィズ・ポストコロナの学校保健 -世界戦略とその普及における課題- |
琉球大学 大学院保健学研究科長 医学部保健学科長・教授 小林 潤 氏 |
17:03~17:13 | 質疑応答 | |
17:13~17:15 | 閉会のあいさつ/アンケート | EDU-Portニッポン事務局 |
講演資料
こちらからダウンロードできます。
1_日本の学校保健の特徴と途上国への展開の可能性(JICA)
■日本の学校保健の特徴と途上国への展開の可能性
-学校保健に関するJICA協力のこれまでとこれから-
野村 真利香 氏 <独立行政法人国際協力機構 国際協力専門員(栄養・保健)>
JICAによる、学校保健分野での様々な取り組みについてご講演いただきました。最初にご紹介くださったのは、これまでに海外から約180名の研修生が受講している課題別研修「学校保健」です。学校保健教育や制度、養護教諭と保健室、体育、学校給食など、座学・現場見学を効果的に組み合わせた多岐にわたる研修内容に加え、研修生が自国における学校保健制度の構築・改善に取り組むにあたり、研修での学びをどのように生かしているのか、実例を挙げご紹介くださいました。また、途上国における栄養改善、食育、衛生管理などに係る技術協力もご紹介くださいました。これらの事例紹介を通し、教育、保健、栄養など様々なコンポネントを含む点が日本の学校保健の強みであること、また、マルチセクター(教育×保健×栄養×α)で子供の健康課題に取り組んでいくという今後の展望をお示しくださり、参加者から非常に参考になったとの声が寄せられました。
■日本企業の学校保健分野の海外展開事例
-衛生環境改善への取組やコロナ禍における新たな取組-
小林 裕生 氏 <株式会社LIXIL SATO事業部>
基本的な衛生設備を持たない人々が直面する衛生課題の解決に、ビジネスを通して取組む簡易式トイレシステム「SATO」のプロジェクトについて、インドとケニアで実施された学校トイレ設置プロジェクトを中心にご講演いただきました。同プロジェクトでは、生徒や地域住民を対象としたトイレに関する教育にも取組まれており、衛生環境改善における衛生教育の重要性について実例を通しご教示くださいました。また、現地での協力体制の確立や、地域の人々が自ら衛生環境を維持していくための仕組みづくり、事業実施における工夫、地域の衛生課題改善で学校が果たす役割など、事業から得られた学びについても伺うことができました。コロナ禍で新たに始まった手洗いへの取組「SATO Tap」にも触れていただき、衛生環境改善への貢献を目的としたビジネス展開について具体的な話を聞くことができ参考になったと大変好評でした。
■ウィズ・ポストコロナの学校保健
-世界戦略とその普及における課題-
小林 潤 氏 <琉球大学大学院保健学研究科長医学部保健学科長・教授>
新型コロナウイルス対策において学校保健が取組むべき問題として、手洗いなど衛生行動定着のための支援的環境づくり、コロナ禍による貧困や虐待などによる子供達の福祉の悪化や、メンタルヘルスへの悪影響等を挙げられた上で、感染症対策のみならず、社会的経済的影響を考慮に入れ、子供の権利を守るという観点から学校保健に取組む必要性をご教示くださいました。また、現在、途上国へ学校保健を普及させるための戦略の一つに、学校を起点にして地域の「健康改善をもたらす社会的環境」を形成していくという「学校から地域社会へ」というコンセプトが採られており、このようなアプローチがコロナ禍においても重要な意味を持つことをご説明くださいました。ご講演では、途上国において学校保健分野の人材育成支援を行う際の問題(対象国のカリキュラムをいかに生かすか、中長期的観点からの卒前教育の必要性)等、今後取組むべき課題や、災害教育など日本が発信できる強みにも触れてくださいました。大変内容豊かなご講演であったため、もっとお話を伺いたいという声が多数寄せられました。
EDU-Portニッポンでは、今後も学校保健、公衆衛生教育における日本型教育の海外展開に注目してまいります。