国際教育セミナー「教室と世界をつなぐ~学校でのSDGsへの取組~」
EDU-Portニッポンでは、名古屋市において、小中高校の先生方や教育関係者を対象に、国際教育セミナー「教室と世界をつなぐ~学校でのSDGsへの取組~」を開催します。
本セミナーでは、EDU-Portニッポンの公募事業で行われた取組の中から、海外と日本の教育現場が繋がり、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて取り組んでいる事例を紹介します。そして、世界に目を向けたSDGsへの取組の日本の教育現場における意義について考えます。
概要
国際教育セミナー「教室と世界をつなぐ~学校でのSDGsへの取組~」
主催 | 文部科学省「日本型教育の海外展開(EDU-Portニッポン」事務局 |
日時 | 令和6年8月5日 14:00-16:00(13:30開場予定) |
場所 | TKPガーデンシティPREMIUM名古屋新幹線口 3A (アクセス) 愛知県名古屋市中村区椿町1-16 井門名古屋ビル3階 |
対象 | 小中高校の先生方、教育関係者、教育にご興味がある方(学生も含む) |
費用 | 参加無料 |
申込 | こちらのフォームにご回答ください。 申込期限:8月02日(金)17:00まで ※締切後の申込希望についてはメールでお問い合わせください。 |
後援:半田市教育委員会、国際協力機構(JICA)中部センター、名古屋市教育委員会、三重県教育委員会、愛知県教育委員会
プログラム(予定)
時間 | 内容 | 講師 |
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14:00~14:05 | 開会あいさつ・EDU-Portニッポンの紹介 | 文部科学省 大臣官房国際課 |
14:05~14:15 | 愛知県における学校への取組支援について | 愛知県教育委員会 あいちの学び推進課家庭教育・地域連携支援グループ 主査 髙井規行氏 |
14:15~14:35 | CO2濃度の実測データを教材化した環境教育の海外展開~「ゼロカーボンスクール」の普及に向けて | 名古屋産業大学大学院環境マネジメント研究科長 特任教授 伊藤雅一氏 《台湾》高雄市立高雄女子高等学校 兼任教員 陳建宏氏(ビデオレター) 《ネパール》Pashchimanchal Secondary School 校長 Saroj Koirala氏(ビデオレター) |
14:35~14:55 | 「We are Ready ! 今つながるカンボジアの教室」ー持続可能な つながり方、学びあい方、そして始め方ー | 日本福祉大学 客員教授/㈱内田洋行教育総合研究所 顧問 影戸誠氏 《カンボジア》Meta Karona Kroper Primary School 教諭 Chansey Hun氏(対面参加) |
14:55~15:10 | 海外SDGs事業が生徒に与えた意識の変化と教員としてのアクション | 名古屋経済大学市邨高等学校 教諭 松野至氏 《台湾》鳳山商工高等学校 教諭 許智堯氏(ビデオレター) |
15:10~15:55 | パネルディスカッション「世界に目を向けてSDGsに取り組む意義」 | 名古屋大学大学院国際開発研究科 教授 山田肖子氏 取組事例発表者3名 |
15:55~16:00 | 閉会あいさつ |
チラシ
講演資料
- 「愛知県における学校への取組支援について」愛知県教育委員会
- 「CO2濃度の実測データを教材化した環境教育の海外展開~「ゼロカーボンスクール」の普及に向けて」名古屋産業大学大学院
- 「「We are Ready ! 今つながるカンボジアの教室」ー持続可能な つながり方、学びあい方、そして始め方ー」 日本福祉大学
- 「海外SDGs事業が生徒に与えた意識の変化と教員としてのアクション」 名古屋経済大学市邨高等学校
開催報告
■愛知県における学校への取組支援について
髙井 規行氏 <愛知県教育委員会 あいちの学び推進課家庭教育・地域連携支援グループ 主査>
愛知県教育委員会が行っている、学校におけるSDGsに関連した取組への支援について、主に「ユネスコスクール」(注1)を中心にご講演いただきました。また、愛知県の各部署の取組や今後の課題についてもお話しいただきました。
(概要)
愛知県教育委員会は、2024年6月時点で県内83校が加盟する「ユネスコスクール」の活動を支援することで、県内の学校が取り組むSDGs達成に向けたESD(注2)活動の充実を目指しています。「ユネスコスクール支援会議」を年2回開催し、加盟校の活動やネットワーク形成を支援しています。また、先進的な活動をしている学校やNPOなどから、加盟校に講師を派遣することで、ESD活動の促進と関係機関同士の連携を推進しています。
県全体としてもSDGsに積極的に取り組んでいます。「あいちSDGsパートナーズ」に登録した企業・団体等を学校に紹介することを通じ、「学校を核とした地域づくり」「地域と共にある学校づくり」を目指しています。また、「環境学習コーディネーター」「あいちecoティーチャー」などの取組を通じ、継続的・発展的な環境学習も推進しています。
SDGsの高い認知度に対して、ESDに対する理解は広がっていません。それゆえ、現場の先生方は「何か新しいことをしないといけないのでは?」と受けとめ、負担を感じられているようです。しかし、日本の学校の教育活動には既にESDが多く取り入られています。それらがSDGsにも貢献するという意味付け、位置付けを行うことが重要だと考えています。また、学校以外の民間企業や地域人材に、学校の教育活動へ参加していただくための橋渡しも務めていきたいと思っております。
- ユネスコスクールとは、ユネスコの理念を学校現場で実践するために発足した国際的なネットワークであるASPnetに加盟している学校を指す。国内に1,088校(2024年4月現在)存在する。日本では持続可能な開発のための教育(ESD)の推進拠点として位置付けられている。
(出典:ユネスコスクール事務局) - ESDとは、Education for Sustainable Developmentの略称で、持続可能な開発のための教育を指す。問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会の創り手を育むための教育を意味する。
(出典:文部科学省)
■CO2濃度の実測データを教材化した環境教育の海外展開~「ゼロカーボンスクール」の普及に向けて~
伊藤 雅一氏 <名古屋産業大学大学院環境マネジメント研究科長 特任教授>
2021年度応援プロジェクト及び令和5年度調査研究事業に採択された、環境教育事業の台湾・ベトナム・インドネシア・ネパールへの展開と、事業に参加した生徒の意識や行動の変容等についてご講演いただきました。
(概要)
名古屋産業大学では、2003年にCO2濃度の実測データを教材化する環境教育研究プロジェクトを開始し、これまでに国内外の小・中・高等学校延べ227校、8,000名を超える児童生徒が参加しました。
本プロジェクトは、学校周辺でCO2濃度の計測を行い、そのデータをマッピングし、身近なCO2の吸収源・排出源を可視化することで、脱炭素地域づくりのための行動変容を促す環境教育を普及させることを目的としています。また、国内で始めた取組を台湾、ベトナム、インドネシア、ネパールに展開することで、グローバルシチズンシップの醸成、学校間交流を通じたパートナーシップの形成を目指しています。
現在は、学校環境緑化、エコ改修、省エネ活動等により、学校生活のカーボンニュートラル化を目指す「ゼロカーボンスクール」の普及を目指しています。国内の3校と、台湾・インドネシアの各1校が協力して、モデル事例開発に取り組んでいます。
本プロジェクトにご関心がありましたら、参加を歓迎しますので、ご連絡ください。ゼロカーボンスクールの活動をさらに広げていきたいと思っております。
<Pashchimanchal Secondary School校長 Saroj Koirala氏(ネパール)からのメッセージ>
学校周辺のCO2濃度調査をきっかけとして、樹木の果たす重要な役割を生徒たちが知ることができました。それが発展して、生徒たちが植樹活動をはじめとする緑化活動への取り組むようになり、ネパール国内全体の環境問題に関心を持つようになりました。
<高雄女子高等学校兼任教員 陳建宏氏(台湾)からのメッセージ>
活動に参加する生徒は、学校の消費電力等から算出するCO2排出量と、校内の植物から推定されるCO2吸収量の対比など、自ら研究テーマを提案して実験を設計・実施し、成果を発表することができています。生徒たちの達成感も大きく、「環境教育に留まらず、積極的にディスカッションやプレゼンテーションが行えた」、「専門家や外国の生徒との交流などにも結び付いた」、「非常に良い経験ができた」といった感想が寄せられています。
■「We are Ready ! 今つながるカンボジアの教室」-持続可能な つながり方、学びあい方、そして始め方-
影戸 誠氏 <日本福祉大学 客員教授/株式会社内田洋行教育総合研究所 顧問>
2010年からカンボジアでの教育事業、特にICTを活用した教育の推進に取り組んでおられる影戸氏より、事業の展開についてお伺いした後、カンボジアの学校教育現場の様子をChansey Hun氏との対談形式でご紹介いただきました。
(概要)
カンボジアでは、教員の指導に課題があり、初等教育の段階でも毎学年20%ほどの児童が留年しています。
カンボジアの教員に、日本の大学生・中高生の関わりも得て作成した英語や算数の教材を提供し、クメール語の教材作成を支援してきました。それらの教材は、教員が広く活用できるよう、ウェブサイト「Cambodia kids(https://www.camkids.net/)」に集積しています。JICA草の根協力支援型「地方教員養成校が導く地域ICTモデル校の実現」プロジェクトにて、対象校にプロジェクターを配布し、「電気と通信さえあれば、どんな学校でも同じ質の授業が受けられる」状態を作ることを目指しています。現在実施中のEDU-Portニッポン応援プロジェクトでは、宿題を児童が持ち帰ることができるよう、プリンターを導入しました。これらの取組により、日本の教育の特徴である「No one left behind」をカンボジアでも実現したいと考えています。既に留年率の低下などの成果が表れています。
教材作成に関わった日本の大学生や中高生には、実際に現地を訪問しカンボジアの教育について学ぶ機会を提供しています。自分たちがSDGsの達成に寄与しているという実感を持ち、帰国後、さらに活動に取り組む学生や生徒も少なくありません。
<Meta Karona Kroper Primary School教諭 Chansey Hun氏(カンボジア)の発言>
カンボジアの公立学校教員の給与は月300ドルほどで、多くの教員は午前中に本務校での仕事が終わると、午後は私立学校で講師をします。従って、教材研究をする時間はありません。そんな中、プロジェクターの導入により、子供たちは以前より興味を持って授業に参加するようになりました。またプリントを配布することで、宿題にも積極的に取り組むようになりました。
■海外SDGs事業が生徒に与えた意識の変化と教員としてのアクション
松野 至氏 <名古屋経済大学市邨高等学校 教諭>
ユネスコスクールに加盟している名古屋経済大学市邨高等学校における、カンボジアや世界の難民への支援活動と、日本の生徒及び共同で活動している台湾の生徒の意識的変容についてご講演いただきました。
(概要)
市邨高校は、専門家や企業の方々、海外の教育関係者などと連携して、国際支援を教育活動に織り込むことで、生徒たちに「自分たちも誰かの役に立てる、地球市民としてSDGsに貢献できる」という自己有用感を育む取組を行っています。具体的には、コロナ前からカンボジアの貧困地域の学校に遊具を寄贈したり、コロナ禍においてはマスクや石鹸を寄贈したり、直近では手洗い場の設置に取り組んでいます。
シリア・パレスチナの難民女性を支援する活動も実施しています。難民の方々が作った手芸品を日本で紹介して販売するなど、生徒に広く世界の「現場」と繋がる体験を提供しています。このような活動を、国内の協力校に加え、韓国と台湾の高校とも連携して実施しています。
生徒を対象にアンケート調査を実施したところ、活動に参加する前は「国際問題の解決に自分が役に立てていると感じる」と答えた生徒がわずか40%だったのに対し、活動に参加した後は95%に増加しました。また、「今後も活動に取り組みたい」、「以前よりも世界の出来事に関心を持つようになった」と答えた生徒も同じく95%に上りました。世界の現場を知って自分たちにできる支援を行う体験の結果、生徒たちの意識、特に自己有用感の向上という変化が表れました。
<鳳山商工高等学校教諭 許智堯氏(台湾)からのメッセージ>
台湾の生徒にも同様のアンケート調査を実施したところ、「国際問題の解決に自分が役に立てていると感じる」と答えた生徒は、活動参加前が30%だったのに対し、参加後は100%に増加しました。同様に、参加した全生徒が、世界の出来事への関心を持つようになり、活動への継続意欲も高まっています。
事例紹介の後、名古屋大学大学院国際開発研究科 山田肖子教授をモデレーターとして迎え、パネルディスカッション「世界に目を向けてSDGsに取り組む意義」を行いました。
SDGsへの取組に関わった生徒や学生にはどのような変化が生じたか、という問いかけに対し、登壇者からは「生徒は自分たちも海外と繋がってSDGsに貢献できると意識するようになった」、「参加した教員もこの経験を各教科の指導に繋げていこうと意識するようになった」、「トラブルを共に乗り越えることで、生徒や学生と教員の連帯感が強まった」などの回答がありました。
参加者からは、「(SDGsへの取組が)生徒の行動変容にまで至っている事例を知ることができて良かった」「世界と繋がることで、未来を生きる世代の教育が実現する。特別な先生でなくとも、誰もがその風景を見られるような日本の教育を実現したい」といった感想が寄せられました。