エジプトにおける教育の状況とエジプト日本教育パートナーシップ (Egypt-Japan Education Partnership: EJEP) (在エジプト日本大使館 一等書記官 星野有希枝)

エジプトでは、急速な人口増大と不安定な社会・経済状況を主な背景として、学校施設・教職員の不足、質の低下といった問題が公教育において顕在化しています。社会の教育に対する関心は一般的に高いのですが、進級試験を重視する学歴社会的傾向が強く見られ、その結果、暗記を中心とする詰め込み型教育になっているとの批判もなされています。更に、十分な教育を受けられなかった若者が、就業できずに、結果的に過激主義に走る危険性も指摘されてきました。

こうした状況を踏まえ、エジプト政府から教育分野における協力につき、日本政府に要請があり、2016年2月にエルシーシ大統領が日本を訪問した際には、今後の日エジプト間協力の柱の一つとして教育分野が取り上げられ、エジプト日本教育パートナーシップ(EJEP)が首脳間共同声明の付属文書として発表されました。

EJEPは、教育・人材育成が国家づくりの基礎であるとの両国首脳の認識の下、日本とエジプトが基礎教育から技術教育、高等教育に至る広い範囲での協力を強化することを謳っています。より具体的には、①今後5年間でエジプトから日本への留学生・研修生を2500人以上受け入れる、②基礎教育段階において、日本の教育における特徴的な要素である「特別活動」をエジプトの公立学校でも導入する、③技術教育について、日本企業を含む民間企業と連携しつつ改善を図る、④就学前教育について、「遊びを通じた学び」の普及を図る、⑤エジプト日本科学技術大学(E-JUST)に対する両国間協力を継続・強化する、という大きく分けて五つの事項が盛り込まれ、更に、EJEPに盛り込まれた事項を着実に実施していくためのメカニズムとして、両国の関係者が定期的に会合を持つことも決められました。(EJEPの全体像についてはPDFファイル参照)

特に基礎教育では、日本の特徴的な教育カリキュラムのひとつである「特別活動」に着目し、エジプトにおいても特別活動の要素を取り入れた教育を実施、子供たちの規律や道徳心とともに協調性を養い、知徳体のバランスの取れた人格形成を図ることを目的として、「Tokkatsu+」と題したプロジェクトがJICAの支援により、実施されています。本格的にプロジェクトが開始する前に、特別活動にあたるいくつかの活動を試行的に実施した学校では、教員や保護者から戸惑いの声も上がったものの、子供たちの間では校内清掃や日直などに積極的に取り組む様子が見られました。現在のJICAプロジェクトの対象となっているのは当面12校ですが、エジプト政府は2~3年のうちに、特活を実施する学校を200校にまで増やしたいとの意向です。プロジェクトの今後に大きな期待がかかります。

また、こうした政府側の動きに触発されて、日本式の教育を取り入れた私立校を設立したいという問合せが日本大使館にも寄せられています。こうした動きに対して、現在のところはプロジェクトの内容や日本の教育に関する情報提供を通じた支援に留まっていますが、日本の教育に対する関心が今までにないほど高まっているエジプト、民間からの関与・ご支援にも期待できればと考えています。

Egypt-Japan Education Partnership: EJEP [PDF]

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