ガーナにおける教育制度の概要

駐日ガーナ大使館より、ガーナと日本の教育の特徴や課題、両国間での教育協力の可能性などについて寄稿をいただきました。

はじめに

ガーナの教育制度は、幼児教育から高等教育まで、すべての子供たちに包括的で利用しやすい教育を提供するように構成されている。その目的は、知的、社会的、人格的な発達を促し、生徒が現代社会の要求に対応できるようにすることである。包括性と質を重視するガーナ政府は、教育の成果を高め、都市部と農村部の格差を埋めるため、さまざまな改革や政策を実施してきた。ここでは、ガーナの教育制度の構造、主要政策、成果、課題を、日本との比較分析とともに詳しく紹介し、相互学習やベストプラクティスの統合の可能性がある分野を浮き彫りにする。

 

教育制度の構造

 

基礎教育:11年間

基礎教育の流れ

幼稚園2年間、小学校6年間、中学校3年間

 

期間 カリキュラム 目的
幼稚園教育
2年間
読み書き、計算、社会性、衛生観念などの基本的な概念を子どもたちに身につけさせる。
小学校
6年間
英語、数学、理科、社会、現地語を学ぶ。クリエイティブ・アートや体育などといった科目も含まれる。 読み書き、計算、批判的思考力における基礎能力を培い、積極的に学ぶ意欲を育む。
中学校(前期中等教育)
3年間
英語、数学、総合科学、社会、基礎デザイン・技術、情報通信技術(ICT)、現地語を学ぶ。 初等教育で学んだことを確固たるものとし、中等教育や職業訓練に備える。

 

中等教育:3年間

中等教育の流れ

一般教養、一般化学、ビジネス、技術、職業訓練、農業

 

期間 カリキュラム 目的
高等学校(後期中等教育)
3年間
ストリーム(STREAM)教育:
一般教養:文学、歴史、地理、経済などの科目を中心に学ぶ。
一般科学:物理学、化学、生物学、選択数学に重点を置く。
ビジネス:会計学、経営学、経済学、選択数学を含む。
技術:金属加工、木工、製図、建築施工などの技術系科目を中心に学ぶ。
職業訓練:家政学、視覚芸術、その他の職能技術を網羅する。
農業:農業科学とその関連科目を中心に学ぶ。
生徒に専門的な知識と能力を身に付けさせ、進学または就職に備える。

 

(大学・職業専門学校での)第3期の高等教育

高等(第3期)教育

大学、ポリテクニック、教育専門学校、技術専門学校、学士号、修士号、博士号、ディプロマ専門資格

教育機関

大学 さまざまな分野で学士号、修士号、博士号を取得できる。
ポリテクニック(技術教育専門大学) 高等国家ディプロマ(HND)および専門資格を取得できる。
教育専門学校 基礎教育の教員を養成する。
技術専門学校 主に職業訓練と技術訓練を提供する。

目的

専門的な研究開発を行うのための高度な知識と技術を学ばせる。

 

主要な教育政策と近年行われた改革

高等学校教育(後期中等教育)無償化方針(2017年)

概要 すべての生徒を対象に高等学校教育(後期中等教育)を無償化し、経済的な障壁を取り除くことで、就学率を向上させるための政府の取組。
インパクト 高等学校教育(後期中等教育)への就学率が大幅に向上し、より多くの生徒が中等教育を受けられるようになった。

カリキュラム改革(2019年)

概要 学習成果を向上させ、国際基準に見合う教育を提供することを目的とした新基準に基づくカリキュラムを導入した。
着目すべき点 批判的思考、創造性、問題解決能力を重視している。コーディングやロボット工学などの科目を基礎教育レベルで取り入れている。
教員養成と専門能力開発
継続的な取組 教員の質を高め、より効果的な教育の提供を実現するため、教員の能力開発を継続的に実行する。現職研修を義務付けるほか、勉強会・研修会・セミナーなどを導入する。
目標 教員が近代的な教授法と教科の知識を確実に身につける。

教育のデジタル化

着目すべき点 情報通信技術(ICT)の教育・学習プロセスへの統合。
取組 教員及び生徒へのノートパソコンとタブレット端末の配布、学校へのICTラボの設置、オンライン学習プラットフォームの構築。
目的 デジタルツールやリソースを活用して、質の高い教育をより多くの人に提供する。

 

ガーナの教育部門におけるマイルストーン(中間目標)と成果

就学者の増加

成果 特に高等学校教育(後期中等教育)無償化政策により、あらゆる教育レベルにおいて就学率が大幅に上昇した。
インパクト さまざまな社会経済的背景を持つ子どもたちの教育を受ける機会が増大した。

ジェンダー間の教育機会の平等

進歩 基礎教育、および中等教育において教育機会のジェンダー平等を達成するための努力が良い成果を挙げ始めている。
インパクト 女子生徒の就学率と定着率が向上し、教育におけるジェンダー平等がもたらされた。

インフラの改善

取組 新たな教室の建設、教材の提供、学校設備の充実など、教育施設の拡充・整備を行った。
インパクト より良い学習環境を整備し、より多くの生徒を受け入れるキャパシティが向上した。

世界的な認知度

成果・実績 ガーナの教育改革と政策は、広く海外でも認知されており、ユネスコや世界銀行といった世界的な教育機関から支持を得ている。
インパクト 国際機関からの資金援助と技術支援が増加し、教育部門全体の改善につながっている。

 

ガーナと日本の比較分析、教育手法と理念の違い

比較項目 ガーナ 日本
教授形式 教員主導型の講義形式。 生徒が主体となる対話型、双方向式。
カリキュラム コア科目を重視。 道徳教育を含む幅の広いカリキュラム。
評価 BECE、WASSCEといった一発勝負型のハイステークス試験による評価。 ハイステークス試験に重点を置かない継続的な評価。
課外活動 限定的で、多くの場合学業向上のために行われている。 スポーツ、芸術、クラブ活動など多種多様。
学年構成 3学期制、長期休暇あり。 3学期制、休暇は短めである。

比較的に優位である点と課題

ガーナの強み

政府の強力な支援と政策 質の高い教育をより多くの子供たちに提供するため、教育改革と教育政策に積極的に取り組んでいる。
教育を重視する文化 教育は、社会経済的地位向上の手段として重視されている。

ガーナの課題

一貫性のない教育の質 教育の質は地域によってばらつきがあり、農村部はしばしば遅れている。
リソースとインフラの不足 特に農村部や僻地では、リソースにも限りがありインフラも不十分である。

日本の強み

高い教育水準と学生たちの好成績 日本の学生は国際的な評価においても常に高い成績を収めており、学術的な優秀性(卓越性)に重きが置かれている。
生徒の全人的な(ホリスティック)成長に寄与する充実した課外活動プログラムにより幅の広い教育が行われている。

日本の課題

プレッシャーの高い環境 学業成績に対するプレッシャーが高く、生徒のストレスやメンタルヘルスの問題を引き起こしている。
生徒数の減少 出生率の低下により生徒数が減少し、就学率や学校の持続可能な運営にも影響を及ぼしている。

相互に学べる分野

ガーナ

全人的(ホリスティック)で生徒が主体となる教育方法 日本の双方向的で生徒が主体となる教育手法に学び、生徒の関心と理解を深める。
充実した課外活動プログラム 生徒の全人的な(ホリスティック)成長を促進するため、幅広い課外活動を取り入れる。

日本

地域社会の関与とインクルーシブ教育の実践 学校と地域社会の連携を強化するため、ガーナの強力な地域社会関与とインクルーシブ教育の実践を取り入れる。
災害などからの回復力と適応能力に関する戦略 ライフスキルと実践的教育に重点を置くガーナにヒントを得て、生徒の立ち直る力と適応能力を高める戦略を実践する。

 

ガーナにおける日本型教育の可能性

ガーナにおける日本型教育の可能性、日本の教育手法を導入するメリット

生徒の授業への関心を高める、生徒の全人的な成長、規律と秩序

生徒の授業への関心を高める 双方向的で生徒中心の学習は、学習意欲と理解度を向上させる。
生徒の全人的な(ホリスティック)成長 道徳教育と課外活動に重点を置くことで、総合的で幅の広い成長を促す。
規律と秩序 日本型教育は規律と他者に対する敬意を重視しており、これは学校環境全体に有益である。

教育交流またはパイロット・プロジェクトの成功例

教員交流プログラム ガーナ人教員と日本人教員の相互学習と能力開発のためのコラボレーション。
学生交流プログラム ガーナと日本両国の学生が両国の教育を体験する機会。
パイロット校 ガーナの一部の学校で日本型教育を導入し、その効果を検証する。

ガーナの学校で日本型教育を実践するための提言

プロフェッショナルの育成 ガーナ人教員に日本型教育の実践と方法論を指導する。
カリキュラムの修正 日本の教育カリキュラムをガーナの状況に合わせて修正する。
地域社会の関与 新しい教育実践の導入に保護者や地域社会を参加させる。
モニタリングと評価 導入した手法の影響と効果を評価するシステムを構築する。

 

ガーナ式教育から日本が学べること

地域社会の関与 地域社会の強力な支援と学校への関与により、当事者意識と協調性が育まれる。
インクルーシブ教育 社会から疎外されたグループを取り込み、すべての人が平等に教育を受けられるようにする取り組み。
地域社会の教育への関与とインクルーシブ教育を強化するガーナのアプローチ
保護者と教職員による教育関係団体(PTA) 学校の活動や意思決定に保護者を参加させる積極的なPTA。
地域に根ざした学校 地域社会の支援を受けて僻地区域に学校を設立する。

生徒の回復力と適応能力を育む戦略

ライフスキル教育 カリキュラムにライフスキル教育を取り入れ、生徒が実社会で直面する課題に備える。
適応能力向上プログラム 創造性、問題解決、批判的思考を奨励し、生徒の回復力を高めるプログラム。
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