「世界がぜんたい 幸福にならないうちは 個人の幸福はあり得ない」 宮沢賢治
この言葉に励まされつつ私たちは、学生とともに「カンボジア」「フィリピン」などの国を歩いてきた。日本は島国であり、98パーセントが日本人という、非常に特別な環境である。日本の国際交流・支援は切れやすい、続かない。言葉の問題と地理的な隔たりの中で、「繋がりつづける」難しさが常に存在した。 1995年から日本の教育にはインターネットが取り入れられ、国際連携も大きく様変わりした。ICT活用の実践も積み重ねられ「繋がりながら、共に考え、支援協力」していくことが今、可能となった。また日本の得意分野ともなりつつある。
つながりのベース、「ワールドユースミーティング」
文部科学省の後援を得てカンボジア、フィリピン、インドなどの国と学生交流を推進している。今年で18年を迎える。各国の学生を日本に招き、学生と協働プレゼンテーションに取り組む。来日前のインターネットを使った協働リサーチ、作りこみに特徴がある。このイベントがベースとなり、年度後半には現地でのフィールドワークがセットされている。
フィリピン ミンダナオ国際大学
ドゥテルテ大統領の登場でミンダナオ島は有名になりつつある。戦前より日系人が多く住む地域である。ミンダナオ国際大学(MKD)との連携は歴史が深く2003年から現地訪問、科研費による授業連携・授業方法の改善を行っている。また2016年6月からは中等教育が4年から6年に改善され、新制度の高校が併設され、情報教育の支援が検討されている。「対話的な学び」を中心とするアクティブラーニングの学びを、これから紹介していくこととなる。またEDU-Portの一環として、日本教育工学会と連携して、現地近隣の学校の教師も集め、得意分野であるICTの効果的な活用を現地で先生方と考えていきたい。
2008年度よりカンボジア連携
日本でのイベントの後、2月にカンボジア大学プノンペン校、カンボジア・日本人材開発センターを毎年訪問している。日本のICT活用ICT教育を紹介する場として、交流を続けている。 2017年にも政府の「地域教員研修センター」を訪問する予定である。情報教育に取り掛かりつつあるが端末が全く足りない。情報教育と、すでに取り組みつつある「清掃活動」をとともに応援したい。
地方の状況
カンボジアでは貧しい農村でも教育への関心は高く、彼らは教育が貧困から抜け出すための手段であることを知っている。英語学習に関する取組として、せめて音や映像を使った日本型ICT活用が提供されればとパソコン、プロジェクターを持ち込み、英語担当の教員が指導法を説明した。この学校には電気がない、2部制の学校である。プロジェクターが使えるだけの電力を供給するソーラーパネルを設置した。すでにこのような活動が10年を迎えている。現地の NGO と連携し今後もささやかではあるが確実に繋がっているという信頼感でプロジェクトを進めていきたい。
途上国におけるネットワーク事情
フィリピン、カンボジア両国とも専用回線のコストは高い。インターネットがどの国でも使える時代になってきたが、10MbpsのADSLで15,000円程度のコストである。大手通信会社間の競争がないのが原因のようだ。一方SIMの普及は進んでいて、SIMは2ギガで5ドルである。教育支援を考える時、途上国においては、ファンダメンタルの改善と通信様式を考えた対応が必要だ。また、カンボジア・クメール語の入力はいくつかのキーを何回か押して一つの文字が出てくる。入力方法も今後改善されるべきであろう。
■著者プロフィール
影戸誠(Makoto Kageto)
日本教育工学会 評議員/日本福祉大学 国際福祉開発学部 国際福祉開発学科 教授 /博士(情報学) 教育分野:教育工学