インドネシアで関数電卓を活用した高校数学授業の定着を目指して奮闘中! (令和3年度応援プロジェクト:カシオ計算機株式会社)

■事業概要

カシオ計算機株式会社は、EDU-Portニッポン応援プロジェクトにおいて、タイ・インドネシア両国の高校生に関数電卓を活用した探究型数学教育を提供し、「自ら考え学び続ける」人材の育成に取り組んでいます。具体的には、教材開発、教師研修、関数電卓を用いた授業の学力や問題解決能力習得への貢献について有効性分析、評価を行いました。以下、インドネシアでの取組をご紹介させていただきます。

■教育文化省教師教職員総局長との面談

インドネシアでは「新しい産業のニーズにこたえられる人材育成」が国家戦略となっており、そのために生徒が分析力、評価スキル、創造力といった高次思考力(HOTS)を身に付けられるようにカリキュラム改革を行っています。
インドネシア教育文化省教師教職員総局のイワン・シャフリル総局長(当時)との面談では、関数電卓を活用した探究型数学教育の実践を通じて「自ら考え学び続ける」人材の育成に取り組み、HOTS習得を目指すという本プロジェクトの内容をご説明したところ、「論理的思考力・創造力・計算能力」などが教育改革の方向性と一致している、と先方より大きな関心が寄せられました。


教育文化省教師教職員総局イワン・シャフリル総局長(当時)
との面談 (2021年11月29日)

■パイロット授業

ジャカルタ特別州の普通科高校をパイロット校として、HOTSを身に付けることを意識したパイロット授業を実施しました。
それに先立つ教材開発やパイロット校教師への研修は、インドネシアの教育文化にあった内容となるよう、現地教育関係者と協業しながら進めました。


パイロット授業の様子

■パイロット授業の有効性分析・評価

教師研修を受け、パイロット授業用教材及び関数電卓を用いて授業を実施した実験クラスと、従来の教材を用い、従来の教え方で授業を実施した対照クラスにおいて、それぞれ事前・事後に学力テストを実施しました。
学力テストの点数の伸びは、対照クラスよりも、関数電卓を使用した実験クラスのほうが大きいという結果になりました。

■教師・生徒の意識の変化

EDU-Portニッポン応援プロジェクト採択直後に、関係機関やパイロット校を訪問し、協力要請やヒアリングを行いました。パイロット校校長はパイロット授業の実施に賛同するものの、現場の数学教師が保守的で授業スタイルを変えることに前向きではないため、意識を変えることができるかどうかがカギである、という見方をしていました。

ところが実際は、パイロット授業終了後も関数電卓を用いた授業を継続できるよう、現場の教師が校長や教務主任に積極的に働きかけました。こうした働きかけもあり、関数電卓をパソコン上で動かすことのできるソフトウエア(エミュレーター)を使った授業が引き続き実施されています。また、校長は教師の声を受け、学校予算で関数電卓を学校備品として購入することを決め、2023年7月の新学期より本格的に関数電卓を使った新カリキュラムの授業を開始する予定です。

現場の教師の意識が変わるかどうかが課題と言われていた中で、関数電卓を使った授業の良さを体感し、このような動きが起きたことは私たちにとって嬉しい驚きで、実際に関数電卓に触れていただくことの重要性を改めて認識しました。

また計算が苦手、数学嫌いという生徒が多い中、パイロット授業終了後に生徒から「関数電卓を使った授業は楽しかった」、「今度はいつやるの?」といった声が挙がっていたという話も伺いました。

■関数電卓を使った数学授業の定着を目指して

インドネシア教育文化省と協業に関するMOU(覚書)を締結することができました。
関数電卓を使用した数学授業の定着化を通じ、新カリキュラムで掲げる大方針実現に貢献するという主旨のもと、教材開発、教師研修、授業実践を柱に、対象エリアをジャカルタ特別州から他州へ順次、拡大しながら取り組んでまいります。


インドネシア教育文化省とのMOU締結(2022年9月9日)

学校現場からは、新カリキュラムをどうやって教えればいいのか分からず困っているという声も聞こえています。一方的な教材提供や教師研修ではなく、現場の困りごとをきちんと把握して、適切なソリューションを提供できるよう、心がけていきたいと思います。

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