マラウイと日本をオンラインでつなぐ取組を通して、衛生教育に関する特別活動を実施。楽しく参加しながら、命を守る行動を学びました。(令和3年度調査研究事業:特定非営利活動法人Colorbath)

アフリカ南東部に位置するマラウイ。私たちはこの国を拠点に、2012年頃から世界の教室とつながるオンライン交流事業を行っており、ICTを活用した教育づくりに知見があります。

2020年度には、EDU-Port公認プロジェクトとして採択され、「マラウイとのICTを活用した児童・教師参加型の双方向グローカルプログラム推進事業」を行い、令和3年度には、EDU-Port調査研究事業として、「ICTを活用した学校保健環境の向上に関する実証調査」をマラウイにて実施しました。

現在は、マラウイの小学校にて、「手洗いうがい」「予防接種」などの衛生的な習慣の重要性を伝えるために、日本で言う特別活動に相当する時間を活用する取組を行っています。

数千人規模の児童が通うマラウイの学校。全児童に対して情報を漏れなく伝えることは、教員にとって簡単なことではありません。そこで「全校集会」「クラブ活動」「委員会」など、児童自らが参加しながらほかの児童に学びを共有していく取組を実施することで、汎用的な実証モデルを作ることを目指しました。また、この取組内容を日本とのオンライン交流を通して共有することで、日本とマラウイの児童がより深くお互いのことを知り、学び合える関係性づくりも進めています。

2022年12月には、Colorbathスタッフが現地に渡航。首都リロングウェから車で北上すること約6時間、ムジンバという地域の小学校で実証活動を行いました。まずは「全校集会」に参加。紙の資料を配布するための予算がないこと、全ての家庭が携帯電話等を保有しているわけではないことから、児童への情報の周知は全校集会にて行われます。

今回は特別にマイクとスピーカーを手配しましたが、普段は2,000名の児童に対して、地声での説明。先生が児童に掛け声を揃えさせたり、手を叩かせたりすることで、少しずつ説明していきます。Colorbathスタッフも挨拶させていただきましたが、やはり児童にメッセージを届け、関心を引くのは現地の先生方の方が圧倒的に上手でした。


画像①:全校集会の様子(カプタ小学校)

次に、この全校集会の場を活用した児童主体の啓発活動を2つ紹介します。

まずは、合唱クラブの活動です。有志の児童が替え歌を作り、様々な課題に対して啓発を行います。マラウイでは、歌、ダンス、リズムは、集団マネジメントの観点でも重要な要素です。 騒がしかった児童たちも、合唱クラブの児童の歌を聞いているときには静かに集中モードに入ることが習慣づけられています。この全校集会では、合唱クラブの児童たちが「コレラを予防するための啓発ソング」を作詞・作曲し、オリジナルソングとして歌っています。コレラの予防の仕方、手洗いうがいの重要性を丁寧に伝えています。

Colorbathスタッフも、歌の活動のデモンストレーションを行い、児童たちが歌を聴くだけではなく、自分も参加できる歌や振り付けを行うことで、記憶にも定着しやすくなることを伝えました。「児童が参加しながら学ぶ」という考え方は、先生方にとっても新鮮だったようです。


画像②:合唱クラブによるオリジナルソングの披露

2つ目は演劇クラブによる啓発活動です。感染症の危険性や予防接種の重要性について、児童が台本を作り劇にして披露しています。児童の迫真の演技によって、見ている2,000名の児童にもインパクトをもって伝えることができています。目に見えないウィルスだからこそ、まずは児童が対策の重要性をしっかり認識すること。楽しんで学びながら、自分の保護者にも伝えていくことが重要です。


画像③:今回は特別に予算を計上し、マイクとスピーカーを使用

また、特別活動に相当する時間を活用した取組の1つとして、美化委員会の児童が学校に木の苗を植える植林活動を行いました。大人がやらせるのではなく「児童が主体になって行うこと」「学年を超えて交流をさせること」が重要。校長先生とも話し合った結果、高学年が穴を掘って、低学年が苗を植えて水をあげる、という役割分担になりました。

木を植える活動は、見た目の効果以上に多くの価値があります。
強い風で校舎の屋根が吹き飛ばされるのを防ぐこと。
木が育てば、それを削って学習机を作れること。
学校の洪水被害を防ぐこと。

美化委員会、そして植林の活動は、地域や児童たちが一緒に、学校を安心して学べる場所へと整えてくれる活動です。


画像④:児童たちと一緒に植林活動

上述したクラブや委員会などの活動については、オンラインを活用して、日本の児童・先生との相互交流を通して、そのポイントや教育効果を学び合ってきました。

オンラインでの交流は、主に「自己紹介」「身体を動かす活動」「質問をベースにした交流」の3つのパートに分けて実施します。

「I am〜」「I like〜」といった簡単なやり取りを通じて、まずは友達になる。
けん玉や兜づくりなどに一緒に取り組んで、心を通わす。
そして、身近な学校生活や好きなもの、お互いの国の特徴などについて、やりとりをする。

これを何回か積み重ねることで、児童たちは言語や距離の壁を越え、自然と自分たちの言葉で「伝えたい」「聞きたい」を表現していきます。プロセスを見守っている大人も、非日常的な「イベント」から、日常的にコミュニケーションスキルを磨き、学習意欲を見出す児童たちの力に気づき、保健教育にも前向きに取り組む原動力となるのです。

これまでの活動を通して、ヒアリングから実証活動、現地の教育局と連携した取組の定着化など、丁寧に取り組んでいくことができました。また、ただ課題を解決するだけではなく、日本とマラウイが相互にコミュニケーションをとりながら共に成長していくことができる交流モデルを作ることができ、今後も継続的な取組ができる状態を作ることができたと考えています。

今後も、現地スタッフや教育局のメンバー、児童たち、そして日本側の教育関係者とも密に連携し、活動を前に進めていきます。

▼Colobathが取り組むオンライン交流プログラム「DOTS」の専用サイトはこちらから
https://dots.color-bath.jp/

 

 

このページの先頭へ戻る