カンボジアにおける香川大学の取組に関する報告会に参加しました
国立大学法人香川大学がカンボジアにおいて実施した「学校保健の普及」の取組に関するオンライン報告会が開催され、EDU-Portニッポン事務局メンバーも参加しました(2021年9月)。
香川大学は、国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業「カンボジア国カンダルスタン郡の衛生教育改善のための学校保健室体制の構築プロジェクト」(2017年2月~2020年2月)やEDU-Port応援プロジェクト「カンボジアにおける学校保健室を基盤とした日本型保健教員養成モデルの開発事業」(2018~2019年)等を通じて、学校保健の普及に努めてきました。本会は、それらの取組の成果や今後の展開等について報告することを目的に開催されました。
(写真1:報告会の様子 1)
(写真2:報告会の様子 2)
取組の成果
日本型学校保健室を、カンボジアの学校へ技術移転することによって衛生教育の普及事業を行った本取組では、以下の成果が報告されました。
・カンボジア初の学校保健テキストの作成
従来のカンボジアの小学校の教科書「サイエンス」から学校保健事項を抽出し、日本の学校保健教科書をモデルにカンボジアで初めてとなる、学校保健テキストを、児童用・教師用、英語版・クメール語版で作成しました。本学校保健テキストは、カンボジア保健省と教育青年スポーツ省(以下、教育省)の認定を受け、版権がカンボジア政府に無償譲渡され、正式な副読本となりました。
(写真3:香川大学で編纂しカンボジア政府に版権を譲渡したカンボジア初の学校保健テキストをみるモンステア小学校児童)
(写真4:香川大学開発のカンボジア学校保健テキストをもとに手洗い方法を指導するプロジェクトマネージャー)
・学校保健室の体制作り
また、ターゲット地区カンダルスタン郡全32小学校では、保健室担当教員の育成や保健室管理を含む学校保健室体制作りにも注力しました。保健担当教員による来室者記録管理・症状管理を徹底することで、来室増加時期などの傾向を把握することができるようになりました。また、保健担当教員の技術開発のために応急手当や、救急箱の適切な管理方法、保護者との連携などを指導しました。
(写真5:日本型保健室で保健担当者からけがの手当てをうける児童)
(写真6:手作りブラックライトボックスで洗い残し検出を行う日本型保健室担当者)
・モデルトイレと手洗い場モデルの建設
3つ目の成果は、カンダルスタンの対象3小学校へのモデルトイレと手洗い場モデルの香川大学オリジナル設計とこれに基づく建設です。暗く、汚れたイメージだったトイレに、熱波を避ける二重屋根、明かり取りを設けるなどの工夫をしました。また、女子専用トイレが無かったため、女子用モデルトイレを新たに建設しました。途中、作業行程増加や物価高騰により、資金が不足する事態が生じましたが、クラウドファンディングを通じ、モデルトイレ建設が無事完成しました。
(写真7:カンボジア教育省学校保健局長(上段右から3人目)とトレア小学校のトイレ清掃を視察)
(写真8:カンボジア教育省標準トイレの香川大学改編モデルとして香川大学が建設した女子トイレ前でウットンポー小学校の児童ら)
香川モデルの導入へ
以上のような取組の中で、香川大学はカンダール州11郡全体の学校に5回にわたるニュースレターの配布など積極的な広報を行いました。また、政府・地方行政担当者が日本型の学校保健室の必要性を理解し、政策として実視していくために必要な具体的なイメージを提供する過程の中で、カンダルスタン郡の日本型保健室に配置された保健担当者等が、モデルとしての役割を務めました。結果、2019年6月に閣議決定されたカンボジア学校保健国家計画には保健室導入を促進することが明記されました。また、政府による日本型保健室モデルが、首都プノンペンに開設され、今後さらに増設されるとのことです。印刷製本された同計画の裏表紙には香川大学のロゴも印刷され、中央政府、カンボジア全土に配布されます。その他にも、香川モデルは本計画の中で、「健康教育」や「健康スキル」などの概念や、ごみの分別と管理、トイレの建設、「クリーンスクール」の競争運動、薬物や性に関するカウンセリングを行うような多目的部屋の設置などに多数反映されています。
2020年2月には、同大学清水裕子先生らが教育省ハンチョン・ナロン大臣と3回目の面談をさせていただき、「香川モデルをカンボジアの学校保健包括プログラムとして今後、整備・実施していく」の言葉と共に感謝状をいただきました。
今後の抱負
本年度より、後継事業として、EDU-Portニッポンの調査研究事業「香川大学衛生教育および学校保健室体制モデルの進展事業」が始まりました。今後は、香川県とも連携し、カンボジア教育省・保健省、カンボジア健康科学大学と共に、学校健康診断データの一元管理システムの整備と学校保健教育研究者の育成システムを構築していく予定となっています。
(写真9:ごみのリサイクル経費で電気代をねん出するための工夫を説明しあう現地教員研修)
(写真10:校庭での学校歯科健診モデル事業に参加したウットンポー小学校の児童ら)