日本の若者が難民問題に挑む「未来ドラフト―わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション」(以下、「未来ドラフト」)を実施しました

事業概要:

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、シリア危機発生以降、多数のシリア難民を受け入れているヨルダン北部で、紛争の影響を受けたシリア難民・ヨルダン人の子どもたちへの補習授業の提供を通じた教育支援事業を2014年から実施してきました。補習授業プログラムの一環として、日本型の特別活動を応用した、日直活動などの学級活動やレクリエーション活動、遠足・文化祭などの行事を通じて、子どもたちのライフスキルの向上、レジリエンス(困難に対応する力)の強化、異なる国籍間での差別意識の軽減・社会的結束の促進に取り組んできました。

写真1:補習授業プログラムでのレクリエーション活動の様子(2017年)

日本の若者の啓発「未来ドラフト」:

2020年度より応援プロジェクトとして採択頂き、パイロット事業採択2年目となる今年は、日本のユースにも難民問題に興味を持ち理解を深めていただくため、この事業のコンテクストに基づき、アイデア・コンペティション「未来ドラフト2021」を実施しました。ヨルダンの二部制の小学校(午前中にヨルダン人児童が通学、午後にシリア人児童が通学)では、学校生活の短縮やヨルダン人とシリア人の児童が相互に交流する機会がないことなどから、児童の間でストレス行動や差別・いじめが課題となっています。課題テーマには、このようなシリア難民、そして受け入れコミュニティのヨルダン人の子どもたちが実際に直面している課題を反映し、『みんなが安心して学校に通い続けられるように、異なる環境で育った子ども同士が互いに分かり合えるアイデア』を設定しました。

アイデア・コンペティション開催概要:

「世界難民の日」(2021年6月20日)に合わせてアイデア募集を開始し、8月中旬の締切までに100のグループまたは個人のアイデアが寄せられました。9月26日には、事前審査を通過した9チームによるオンライン決勝大会を開催し、各チームが渾身のプレゼンテーションを披露しました。各発表後には、審査員よりアイデアを深堀りする質問やコメントが寄せられました。グランプリ賞に選ばれたアイデア「知識を分け合えトレジャーハント」は、来年の春に実際にヨルダンの事業地の学校へ届けられ、シリア人とヨルダン人の子どもたちが活動を通じて交流し、相互理解を深める機会として実現する予定です。アイデアの実践を通して、現地の子どもたちと「未来ドラフト」に参加した日本の子ども・ユースのさらなる交流の機会の創出を目指しています。

写真2:決勝大会でのプレゼンテーションと審査員の講評の様子

写真3: グランプリ賞発表の様子。写真下段は、審査委員長の東京工芸大学教授・福島デザイン主宰の福島治先生。

活動を通しての学び・気づき:

「未来ドラフト」では、多くの参加したユースが、自身の教育や学校での経験をもとに応募アイデアを作り上げた様子が見受けられました。自らの経験を振り返りながら、日本とは全く異なる境遇にいるヨルダンの「難民の子どもたち」が直面している問題と自分がこれまで経験したり感じたりしたこととの共通項を模索し、アイデアへと反映させる過程を通じて、参加した一人ひとりが、問題を自分事として受け止め、真剣に取り組まれた様子がうかがえました。ヨルダンでは、情操教育の機会が限られていますが、日本のユースのアイデアを通じて、特別活動など日本の学校で取り組まれている多様な経験・交流の機会提供の重要性を再認識しました。同時に、日本で教育を受けた子どもたちが、今回のコンペティションで実践したように、その経験を異なる境遇にいる子どもたちとの交流や相互理解の促進においてどのように活用していけるのか、またその過程でどのような新しい学びが得られるのか、といった視点をさらに深め、日本や子どもたち・ユースのよりよい発信・参加の機会を促進することの重要性にも気づかされた機会となりました。

写真4:参加者・審査委員の集合写真

 

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