本事業の一環として、タイのバンコクで開催された教育エキスポ「EDUCA2016」に日本パビリオンを設置しました。参加報告は以下のとおりです(文責:EDU-Portニッポン事務局)。PDFファイルはこちらです。
1.EDUCAとは?
EDUCAは、主にタイの教員の能力開発を目的としたエキスポです。2007年からはじまり、今年で9回目を迎えます。タイの教育省、チュラロンコン大学教育学部、Pico Public Company社により開催されるこのイベントは、毎年、参加者が増加しており、昨年度は延べ51,543名の教員などが訪れました。
今年は、”SCHOOLS AS LEARNING COMMUNITY” をメインテーマに、International Conference、Principle Forum, Teacher CPD Workshop, International Workshop, Exhibitionなどが行われました。スピーカーや出展者は、タイのほかに、日本、イギリス、韓国、台湾、シンガポール、フィンランドなどが参加する、まさに教育の国際イベントといえます。
<EDUCA2016> http://www.educathai.com/en/
International Conference | Exhibition会場 | JAPAN PAVILLION(開催前日) |
2.日本の参加
今年のEDUCAの特徴の一つは、日本の参加です。国際セミナーでは、東京大学名誉教授の佐藤学先生がキーノートスピーチを務め、 ”SCHOOLS AS LEARNING COMMUNITY” のコンセプトや実践例を講演されました。
エキシビションでは、昨年度までも日本からの出展がありましたが、今年は日本の出展者が集まった”JAPAN PAVILLION” が特設され、筑波大学様、富士通株式会社様、株式会社ベネッセコーポレーション様、Nanmeebooks社様(株式会社学研ホールディングス様が設立したタイの法人 Gakken Nanmeebooks Education様の合弁相手企業)が出展しました。たびたびのぞかせて頂きましたが、現地の先生方が多数立ち寄り、とても盛況だったようです。
筑波大学様 | 富士通様 | ベネッセコーポレーション様 | Nanmeebooks社様 |
3.International Conference
EDUCAのメインプログラムともいえるInternational Conferenceでは、日本、イギリス、韓国、台湾、シンガポールの教育研究者などが、” Learning Community” をテーマに、各国での実践状況、効果的な教育活動、リーダーシップ開発などの講演を行いました。
指導計画と指導スキルの重視(Teaching)から学習活動における相互の関係性の充実(Learning)への転換が必要であり、そのために現場の教訓から学ぶことや、民主的な学校運営が大切であることが示されました。体系的な知識をいかに効率的に習得させるかから、学習のプロセスを重視し、いわゆる21世紀型スキルの育成を目指す教育は、いまでは先進国のトレンドになっているかと思いますが、ここタイでもこうしたメッセージが先生方に伝えられている点が印象に残りました。
また、これらを実現するものとして授業研究の意義やポイントが複数の講演者から示され、会場質疑からも授業研究への関心の高さがうかがえました。授業研究は日本の教育の強みでもあります。概念だけでなく、実践としてどう日本の授業研究の良さをわかりやすく伝えていくべきか。わかりやすい発信は、日本型教育の海外展開にあたっての共通のポイントかと思います。
<International Conference Program> http://www.educathai.com/en/conference/program/
4.タイ教育省への表敬訪問
開催2日目は会場を抜け出し、タイ教育省(Bureau of International Cooperation)を表敬訪問しました。「EDU-Portニッポン」の取組を紹介し、タイの教育課題を踏まえた日本型教育への期待についてお話しを伺ってきました。職業教育や産業人材育成においては、産学の需給ミスマッチが課題であること、初中等教育では、「STEM(science technology engineering and mathematics)教育」「イノベーション/アントレプレナーシップ教育」「教育におけるICT活用」「規律や協調性などのソフトスキル」を課題と捉えていること、そしてこれらの拡充に向け日本への期待があるとのことでした。いずれも官民協働プラットフォームの参加団体様が展開されている領域かと思います。個々の動きを結びつけ、包括的な展開ができるよう、事務局として今後も支援していきます。
5.視察を終えて
数日間の滞在でしたが、実際に現地の教育関係者が多数集まる場に身を置くことは、現地の教育ニーズを肌で感じられるとても貴重な機会でした。今年はプラットフォームの皆様へのご案内から開催までの期間が短かったこともあり、出展者様は4団体にとどまりましたが、来年、またご案内できる機会がありましたら、ふるってご参加頂ければと思います。その際は、商材や活動を紹介することに加え、International Conferenceの講演テーマと連動したデモ授業を実施したり、デモ授業で利用する教具・教材とエキシビションを連動させたりと、ストーリー性を持たせた日本型教育の発信ができるとよいと感じます。とくにタイ分科会の皆様とは、タイへの展開の手段としてEDUCAをとらえ、一体となって活用していければと思います。
本年はじめて”JAPAN PAVILLION”が設置できました。出展者の皆様、在タイ日本国大使館寺島一等書記官、運営事務局のPico Public Company社高橋様など、ご関係の皆様のご協力・ご尽力のおかげです。この場をかりてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。